箱瀬淳一(はこせじゅんいち 1955年生まれ ) 石川県輪島市出身の日本の漆芸家。
1975年、蒔絵氏田中将氏に師事。5年間の修行ののち、下地職人に再び弟子入り。塗と蒔絵を使いこなし、世界の有名ラグジュアリーブランドなどとのコラボレーションなど、輪島の漆芸作家として世界に日本の漆文化を伝達し発信する箱瀬淳一氏。日本の伝統文様や花鳥風月などをモチーフにした蒔絵など、卓越したセンスと技術で注目されています。


作り手として使い手の目線に立つことを常に意識されている作品は、上質でありながら手の届く場所にある工芸品。我が家でも惜しみなく使用させていただいています。

箱瀬淳一氏の美しい作品の紹介とともに、特徴とその成り立ちを説明していきます。

箱瀬淳一 代表作品

大灯香炉 吉祥文蒔絵 径5.2×高13.7㎝   

香合   祥瑞蒔絵  径7.0×高6.4㎝    

大灯香炉 吉祥文蒔絵と香合 祥瑞蒔絵

この作品は、作り手の「想い」と工芸の「伝統と革新」に迫る箱瀬淳一氏の世界が詰まった作品です。

器形は、果物や野菜などのイメージで、結実、物事が成就することを表し、その器物に蒔絵、螺鈿などあしらい、放射線状に箱瀬淳一氏が考えた縁起の良い文様をそれぞれに描き入れています。

文様の一つに菊の文様がありますが、蒔絵の技法の中でも立体感を与える研ぎ出しが光る花文様。線の太さ、金地、銀地の光の明暗、密度と空間。

日本の伝統に箱瀬淳一氏の革新が表現された大変美しい作品です。つまみの部分は、七宝焼きでできており、箱瀬氏の作品への想い・こだわりがつまった芸術作品です。

               

「特徴1 静寂と躍動感あふれる技 箱瀬淳一の蒔絵」へつづく

特徴1

静寂と躍動感あふれる技 箱瀬淳一の蒔絵

ぐいのみ 溜 「宝尽くし」  径6.7×高3.9㎝  

加飾の一つに蒔絵(まきえ)という技術があります。

上の写真のぐいのみに描かれた宝づくしの文様。溜漆に、金の線が上品に光ります。所々にブルー、ピンク、紫のヤコウガイの光があしらわれ作品のアクセントとなり華やかさと静寂の調和に箱瀬氏のセンスが光ります。

 

宝尽くしは、中国から室町時代に日本に伝えられた縁起の良い伝統文様「吉祥文様」として親しまれています。

七福神の大黒天がもつ「打ち出の小槌」や秤(はかり)で物の重さをはかるときに用いる「分銅」や「宝袋」「宝巻」「隠笠」などの伝統的な縁起物に加え、鶴や松竹梅などが描かれています。

 

蒔絵とは日本独自に発達した漆芸の代表的な技法です。漆で絵や文様を描き、漆が固まらない内に蒔絵粉(金・銀など)を蒔いて絵にするところから「蒔絵」とよばれています。

蒔絵の種類には、平蒔絵・研ぎ出し蒔絵・高蒔絵などがあり、螺鈿・卵殻塗、梨子地などの技法があります。

箱瀬氏の作品の多くは、研ぎ出し蒔絵をメインに高蒔絵、螺鈿などのはりものなど様々な蒔絵技術を駆使した作品が多く作られています。

箱瀬淳一の蒔絵作品

蓮華 15.9×4.0×高2.8㎝   

蒔絵の道具・材料

蒔絵筆は一般絵画用の画筆とは異なり、粘張である漆をもって描くので、これに適するよう特製されたものです。種類は多種多様にあり、細さ、長さ、形状など描く絵の場所により使い分けます。

筆先が長く特殊な筆と粘り気があり扱いが難しい漆を自由自在に扱う箱瀬淳一氏。

絵に込められた想いを、一線一線に託し、緊張感の中、蒔絵が描かれていく。

蒔絵の材料には「蒔絵粉」「貝」などがあります。

蒔絵粉には金・銀・プラチナ・などがあり、形状、大きさなど様々あります。

螺鈿(らでん)はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝殻の輝く部分を薄くして使います。宝石のような輝きと漆の色・つやの組み合わせの美しさが螺鈿の特徴です。

特徴2 漆と向き合う箱瀬氏の「上塗り」へと続く

特徴2

漆と向き合う箱瀬氏の「上塗り」

鶴口椀 外木地呂内朱うるみ 径13.0×高8.0㎝   

鶴口椀 外木地呂内黒    径13.0×高8.0㎝   

八寸大皿 本朱内飛鉋目   径23.9×高5.3㎝   

輪島塗は100を超える工程を得て美しい漆器となります。

その仕上げの工程である「上塗り」

上の写真は加飾を施さず、器の形と木の肌合いを活かした作品です。

 

上塗りの作業は漆を和紙でこすることからはじまります。 漆に混ざった微小なゴミや塵を取り除くための大切な作業です。塗と乾燥をくりかえし長い時を経ていよいよ完成するというところが上塗りであります。

 

木地の状態から下地、下地塗と研ぎを何回も施された器たちが、艶やかな漆器となるための命が吹き込まれるます。

箱瀬氏はこの上塗り作業を自身の手で行います。形、色、手触り、加飾、すべてが調和し美しく完成する作品たち。
できるだけ分業はせず、自ら図案を起こし制作に携わる箱瀬氏が漆と向き合う大切な時間。おおよそ日常使いのお椀などは加飾はせずに、上塗りを終え完成となります。

塗り作品

カンナ目小鉢 黒・朱・溜 径9.8×高6.5㎝   

マグカップ 黒・朱うるみ・溜  径8.5×12.0×高8.9㎝  

「美が生れる場所 箱瀬工房」につづく

美が生れる場所 輪島箱瀬工房​

輪島の市街地から少し外れた集落にある箱瀬工房。周囲には水田や畑、心地よい風が通り抜ける。

生家敷地内の穀物蔵を改造。し、1階部分の内壁は珠洲産珪藻土、床は能登石のモダンな空間。2階は箱瀬淳一氏の上塗作業場となっている。

ひんやりと冷たい空気。窓から差し込む光。
農家が米や作物を保存するための蔵は重厚でがっしりとして、温度・湿度の変化が少なく漆塗りに適している。蔵の2階に上がると、上塗り作業机に小さな窓が一つ。そこから差し込む光が独特の雰囲気を醸し出す。

経験と感覚を研ぎ澄まし、箱瀬氏自らが漆と向き合い、対話する作業が行われます。

漆を塗る刷毛はコシの強い女性の髪の毛。漆をつける前に刷毛の油分やゴミを掻きだします。手入れの行き届いた道具が漆器の仕上がりを左右します。

大小の刷毛を使い手早く漆を塗っていく箱瀬淳一氏。小さなゴミも見逃さず鳥の羽先で丹念に拾い上げては塗り終えたお椀を掲げて確かめていきます

塗ったばかりの漆は温度変化に弱いので、温度と湿度を一定に保った漆風呂に入れられます。
上塗りをした後、ふろで乾燥(※)させ、さらに漆を重ねていきます。
※漆塗りの世界では便宜上「乾燥」という言葉をよく使いますが、本来は漆液に適度な温度と湿度を与えることで「硬化」することをいいます。

こうして、ここ輪島、箱瀬工房で、唯一無二の箱瀬作品が、日本の文化とともに世界へと届けられています。

 

 

 

箱瀬先生の作品の魅力は、これらの技術だけではなく、歳を重ねてもなお少年のような好奇心を持ち、いつも前向きで温かい。人との出会い、触れるもの、見るものに感動する心を常に大切にされるそのお人柄があってこその魅力だと私は思います。

 

箱瀬先生の作品に出会った時、きっと何か伝わるものがあると思います。

是非お手に取って感じて頂ければと思います。

1955年 輪島市生まれ

1975年 蒔絵師田中勝氏に師事

1980年 日本新工芸展初入選他入選4回

1989年 日展入選

1992年 輪島市美術展最高賞

1993年 日本新工芸展新工芸賞

1994年 彫刻の森美術館 あすをひらく新工芸展大賞

2002年 スイス「ギャラリーザッペーニ」

     チューリッヒ「ノイエンジュバンデール」

2004年 イタリア アートフェスタ招待出品

     ヴァンクリーフ&アーペル コラボレーション展

    (モナコ、パリ、香港、クアラルンプール)

2005年 銀座和光ホール100椀100膳展

2009年 六本木ヒルズ ヴァンクリーフ&アーペルパピヨン蒔絵発表

2014年 シャネル 蒔絵時計盤製作

2018年 ヴァレンティノ銀座コラボレーション

2019年 ヘレンドコラボレーション作品発表

その他  全国の百貨店、ギャラリーにて個展開催

箱瀬淳一作品の購入・販売について

日常使いのお椀から豪華な蒔絵を施した作品までさまざまございます。完成品もございますが、受注制作作品は、内容によりますが1年から3年程お時間をいただきますます。

 

高洲堂では箱瀬先生の作品販売の橋渡しをさせていただいております。

作品を事前にご覧になりたい方、購入をお考えの方は下記お問い合わせホームよりお気軽にお問い合わせ下さい。

受注品に関しましては、箱瀬先生とご相談の上、ご足労おかけしますが輪島にお越しいただき、お打合せさせていたく事もございます。箱瀬先生は大変お忙しいため時期によってはお受けできない場合もございますので、ご理解頂きご連絡頂ければと思います。

 

 

なお、作品はお椀、皿、マグカップなど日常使いの器や、重箱など。設え品の香合、パネルなどがございます。

お気軽にお問合せ下さい。

厳選作品

会員ログイン

会員登録をされていない方はこちら

会員登録して頂くと、新作販売や特別販売の案内をお送りいたします。(入会費・年会費無料)