独自のスタイルを築き上げた箱瀬先生の「蒔絵と塗」

1955年輪島市生まれ。1975年、蒔絵氏田中勝氏に師事。

5年間の修行ののち、下地職人に再び弟子入り。

輪島塗では各工程ごとに職人さんが腕を振るう分業制が特徴ですが、

箱瀬先生の物つくりへのエネルギーは「一から自分の手で漆器をつくる」という形へとたどり着きました。

器の形の提案、加飾のデザイン、すべてをプロデュースすることにより、

「蒔絵・塗」の技術に、箱瀬先生の漆器への思いの詰まったデザインが加わり、唯一無二の箱瀬流の美しい漆器が作られます。

 

上塗り

蔵の2階にある先生の部屋。

上塗りの作業は漆を和紙でこすることからはじまります。

漆に混ざった微小なゴミや塵を取り除くための大切な作業です。

机の端に並べられた上塗りの道具たち

漆を塗る刷毛はコシの強い女性の髪の毛。

漆をつける前に刷毛の油分やゴミを掻きだします。

手入れの行き届いた道具が漆器の仕上がりを左右します。

 

木地の状態から下地塗と研ぎを何回も施された器たちが、

この上塗り部屋で艶やかな漆器となるための命が吹き込まれます。

塗りと乾燥をくりかえし長い時を経ていよいよ完成するというところが上塗りであります

ここで、大小の刷毛を使い手早く漆を塗っていく箱瀬先生。

小さなゴミも見逃さず鳥の羽先で丹念に拾い上げては塗り終えたお椀を掲げて確かめていきます。

 

乾燥を待つ漆器たち

 

温度と湿度を保った漆風呂

 

塗ったばかりの漆は温度変化に弱いので、温度と湿度を一定に保った漆風呂に入れられます。

上塗りをした後、ふろで乾燥(※)させ、さらに漆を重ねていきます。

※漆塗りの世界では便宜上「乾燥」という言葉をよく使いますが、

本来は漆液に適度な温度と湿度を与えることで「硬化」することをいいます。

 

蒔絵

加飾の一つに蒔絵という技術があります。

先生の蒔絵作品は金銀の粉や螺鈿などを使いこなし、

華麗でありながら空間美が意識されたクールな世界観があると私は思います。

またさまざまな太さの蒔絵筆で一線一線をえがいていくわけですが、

琴線に触れるような箱瀬先生の蒔絵技術は静寂さの中に躍動感があふれる素晴らしい技だと思います。

蒔絵筆。ネズミの背毛などを使った高価なもの

 

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