人間国宝(重要無形文化財)・小森邦衞先生のきゅう漆。
その両手から作り出される心中の美を表現する漆塗りの高度な技術。
その作品たちは、素地の造形、下地、上塗りという、きゅう漆の全行程を一貫して行なうことで造られていく。
綿密に長期にわたる製作期間を経て生み出される小森先生の作品は、
豊かな情感と、この世のものとは思えない美しさがあふれ出ている。
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【小森邦衞先生の仕事】
秋-autumn-
紅葉の美しい中で緑鮮やかな竹林から、五,六本の真竹を切り出し油抜き後、乾燥のため、井桁に組み上げ来季のための用意をする。
冬-winter-
木枯らしの中で、又降り積もる雪の中で、これから一年間の作品の製図を起こし、素地作りに入る。
昨秋に用意した竹を割り、曲げ輪を組む、作品の骨格が出来上がってくる一番楽しい時です。
春-spring-
陽気と共に気持ちが豊かになってくる。一つ一つ、一日一日の仕事が作品の完成に近づく。
下地と研ぎ、地味な仕事だが、作品の肉付けにあたり一番大切な時期、気持ちのゆるみが恐い時です。
夏-summer-
暑さ喧噪の中最後の仕上げです。 真黒に朱に又溜塗と美しく塗り上げられるか、緊張した中での仕事ですが、漆風呂から出すときの緊張感がたまらなく好きです。
そしてうまく塗れた時、一人で頬が緩みます。
秋風の便りが聞こえてくるころ、心身共弛緩し、一番心安らぎ、そして充電の時期にあたります。
(「人間国宝記念 髹漆 小森邦衞」編集・発行 財団法人 輪島漆芸美術館より抜粋)
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